東京の深川保健所主催の講演会に行って来た。
以前から社保中の斉藤先生の講演会は聞いてみたいと思っていたが、なかなか機会がなかった。特に緩解期の食事療法については、色々疑問に思っていることもあったので、それがすっきりして良かった。
講演会は深川保健所の一室で行なわれ、出席者は50名前後とまずまずの数。出席者の7〜8割は女性であった。
まず最初に『炎症性腸疾患の食事療法のポイント』として
・自分の病状・病態を知りましょう。 ・症状が落ち着いている時(緩解期)と 下痢・腹痛・発熱などの症状が見られるとき(再燃期)との食事を区別しましょう。 ・自分に合う食品・合わない食品を見つけましょう。 ・自分にできることから始めましょう。 |
という4点を挙げた。そしてクローン病については小腸型・大腸型・大腸小腸型では食事が大きく異なることを指摘した。
次に『食事療法の基本』というタイトルのスライドでは
1.高エネルギー→◎ 2.高たんぱく→? 3.低脂肪→◎ 4.低残渣→? 5.乳製品禁→? 6.高ビタミン・ミネラル→◎ |
この6項目は以前にIBDの食事療法の基本といわれていたもので、◎は現在も当てはまるものだが、『?』は間違っているか、ハッキリしない項目である。
◎の点についても斉藤先生は詳しく話したが、従来から言われて来た事であるので、この記事では繰り返さず、『?』の部分について書いておきたい。
4.低残渣について
今は低残渣といわず、低刺激と言う。低刺激食とは
目的) ・腸管の安静を保つ ・下痢・腹痛・腹部膨満を防ぐ ・フードブロッケージ(食物が腸管に詰まること)を防ぐ 例) 唐辛子などの辛い香辛料、炭酸飲料、アルコール 極端に熱いもの・冷たいもの 腸管を刺激する食物繊維 |
『腸管の安静を保つ』とは刺激食を食べると腸管の消化液やホルモンが出すぎ、腸管の蠕動運動が過剰になったりすることにより、下痢になるなどの病態が悪化することを避けることである。
そして『炎症性腸疾患胃おける食物繊維の考え方』として
活動性の病変を有する場合や、狭窄による通過障害のある場合は、食物繊維(非水溶性食物繊維)の多い食品や、消化されにくいたんぱく質を避けるが、それ以外では厳しい制限の必要はない。 便の減少、便性改善胃有効な食物繊維の摂取 難消化性デキストリン(ハイメイズゼリーなど) ヘルッシュファイバー、ソルギンファイバー、イザゴール、GBFなど |
このようにはっきりと再燃期と狭窄がある場合を除いて、食物繊維の制限の必要はないと言っていた。
そして食物繊維について
非水溶性食物繊維〜便の量を増やす 豆類の皮、山菜、キノコ類、海藻類、ごぼう、 レンコン、こんにゃく、しらたき、とうもろこし、 もやし、にら、干した果物など 水溶性食物繊維〜便の性状をコントロール りんご、ばなな、桃などに含まれるペクチン 海藻のぬめりに含まれるアルギン酸 主食に含まれる 難消化性でんぷん(レジスタントスターチ) |
先日ピーナッツが詰まった人が運ばれてきたそうだ。北海道ではとうもろこしでフードブロッケージを起こす人が少なくないそうだ。狭窄のある人は自分の狭窄の程度(狭窄部分がどれぐらいの幅か)を良く知っておく必要があると強調していた。また難消化性デンプンを含むお米は、食物繊維を食べていることに近い効果があるので、パンやうどんなど精製された粉をつかうものより、まずご飯をたべなさいとのことである。
狭窄がなければ、以前言っていたような非水溶性食物繊維を細かく切るというようなこともする必要はない。
緩解期のUCに食物繊維が有効であることは近年常識化しているが、大腸型CDについても有効である。具体的には発芽大麦GBF(使用者の7割に効果有)などのサプリメント型の食物繊維、サイリウムなどのシリアルを勧めていた。
クローン病にお勧めのサプリメント型食物繊維としてはフィブロ製薬のイサゴールなどを勧めていた。イサゴールは下痢の場合は100cc、便秘の場合は400ccの水で溶いて飲むとのことである。
またプロバイオティクスの効果についても
プロバイオティクスとは.... 腸内細菌叢に変化を及ぼし、健康に有益な作用をする生菌を摂取すること。 種類 動物性乳酸菌 発酵乳、乳酸菌飲料 植物性乳酸菌 漬物、納豆、みそ、しょうゆなど 期待される生理作用 ・悪玉菌の増殖を抑え、腸の働きを整える ・下痢の軽減、便性の改善 ・便秘の予防 ・ガス量の減少 ・ガスの臭いの軽減 ・ビタミンB群、ビタミンKの合成、 ・免疫の活性効果(風邪の予防、花粉症やアトピー性皮膚炎などアレルギー 症状の改善) |
を挙げ、お勧めの乳酸菌、ビフィズス菌サプリメントとしてヤクルトBL整腸剤などを、またドリンク・ヨーグルトとして、ヤクルト(小腸に効く)、ヤクルトミルミル(大腸)、GG(小腸)、ピルクル(小腸)などを挙げていた。日清ヨークのピルクルはよくスーパーで安売りしているので良いかもしれない。
その他の注意点としては
・自分にあう食品・合わない食品を見つける ・乳糖不耐症では乳糖を控える ・消化の良いように調理する ・よく噛んで、ゆっくり食べる ・嗜好品を控える ・極端に熱いもの、冷たいものを控える ・腸内細菌を整える ・水分摂取は十分に |
まとめとして『クローン病の日常生活上の注意』として
1.栄養療法の継続 2.食事の注意の継続 緩解期〜脂肪・非水溶性食物繊維・たんぱく質のとりすぎに注意 再燃時〜食事摂取量を減らし、経腸栄養剤をふやす 水分、ビタミン、ミネラルの補給 3.疲れをためない 4.ストレスを貯めない 5.神経質にならない |
他にも質疑応答などでの発言を列挙する。
下痢の人は水分をとると下痢が酷くなるのではないかと心配し、水分を控えてしまい、その結果、脱水症状になって運ばれてくる人が多い。
対策としては最低1日1Lは塩を少量(こさじ2分の1)加えたスポーツ飲料を飲むことだそうだ。スポーツ飲料のほかにもトマトジュース300mlに水700ml砂糖大1と塩小1/2を加えたものでも良い。
貧血対策としては
・病院で処方される鉄剤は貧血の酷いときだけにする。
鉄剤を摂りすぎると体の中で鉄剤が錆びたりする。
・以前はヘム鉄というサプリを勧めてきたが、狂牛病の心配があるので勧められなくなった。
・鉄を含む総合ビタミン剤を今は勧めている。具体的には
Vクレスα
一挙千菜
サンキストポチなど
あるいはクッキングFeか。
エレンタールのフレーバーが気に入らない人は
クエン酸、アスコルビン酸などの柑橘系を少し入れると味がましになる。
エレンタールボトルは11,12月頃から今までのヨーグルトフレーバーからレモンフレーバーに変更になる。
エレンタールの濃度を濃くすることについては、下痢をしない限りOKだと思う。
体重減少には気を配ること。1Kgで7,000kcalに相当する。1週間で1kg減ったら、1日当たり1,000kcal摂取が足りなかったか、炎症などの治癒に回ったと考えるべき。
緩解期にアルコールを適度に飲むことは問題ない。
緩解期には腸はできるだけ使った方がよいという考え方に同意する。
整腸剤はガスが多いと感じた時は普段の2〜3倍の量を服用すると良い。
同じ緩解期でも患者の病態により、合う食事、会わない食事はある。日本栄養師会で『食べてよい』『避けた方が良い』『避けるべき』という3つのカテゴリーに食品を分ける試みが行なわれているが、すべての患者に同じことが当てはまるわけではない。くれぐれも自分で確認することが必要である。
<感想>
非常に有意義だった。斉藤先生の考え方が自分の食事に対する考え方に極めて近かったことを確認できた。ただ、『緩解期には腸管は使った方が良い』とする一方で、あいかわらず『腸管の安静』が低刺激食の理由としてあがるなど、一部にまだ考え方の齟齬があると思った。
休憩時間に先生にJIMROのHPに掲載されている講演会スライドと今日の講演会の内容、特に食物繊維についてが乖離していることを話した。あの講演会スライドは3~5年ほど前のものだそうだ。JIMROの方と話してみるそうである。
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私も暖解期には食物繊維をとったほうが良いと思っていましたが。この記事を読んで合併症や再燃期ではなければよいのだとちょっと安心しています。私の場合は狭窄などの合併症はなく病変も大腸のみで、最近ではきんぴらごぼうやきのこをおいしくいただいております。私は、日本人が昔から食べていた雑穀米やつけもの小魚、玄米などの食事が良いと考えています。玄米などは消化が悪いといわれていますが、よく噛んで(最低50回くらい)食べると消化に良いそうです。
ちょっと路線が外れましたが、とても為になるお話しすごく参考になりました。
これからは、病気と上手に生活をしていきたいと思っています。
玄米はよくかむと消化が悪くなるそうです。
それは、非食物繊維が豊富なためで狭窄や合併症がない方は試してみたらいかがでしょうか?
実際私も今、発芽玄米食べています。今のところ体調も良いです。
本当にすみませんでした。
特に目新しい内容はなかったのですが、治療法についても、内視鏡やCTなどもっと負担の少ない検査法についても、速いスピードで研究が進んでいて、「炎症性腸疾患にとってここ5年くらいでとてもハッピーな時代が来るでしょう。」ということでした。名物?の高添先生の歌声も聞くことができました。
しかしさすが社保中、多くの入院患者さんたちも参加されて、フルカリック等のIVHしている人の多いこと・・・。私の入院していた病院では数人しかいなかったので驚きました。やはり専門のところは規模が違いますね。とはいっても転院などは考えていませんが、画期的な治療法を早く受けるならココなのかなぁ、と思いました。
レポになってなくてすみません。これからもいろいろ参加しようと思っていますので、会場でくろーん40さんとお会いすることもあるかもしれませんね。そのときはよろしくおねがいします。
しかも、わかりやすいレポート、熟読させていただきました。自分が今まで考えていたこととは違っていたこともあって、とても参考になりました。
今は、緩解期とは言えませんので、活動期の食事をしっかり守っていこうと思います。
>私は、日本人が昔から食べていた雑穀米やつけもの小魚、玄米などの食事が良いと考えています。
私も同感です。
ちなみに斉藤先生はCD患者が玄米を食べることについては、『緩解期なら食べても良い』という言い方をしていました。私もだるまさんのように積極的に食べた方が、腸に良いと思うのですが、実際は家族に不評で長く続きませんでした。
たんたんさん、
私も高添先生の話も聞いた事がなかったので、どちらに行くか迷いましたね。
>「炎症性腸疾患にとってここ5年くらいでとて
>もハッピーな時代が来るでしょう。」
そう願いたいものですね。
>そのときはよろしくおねがいします。
こちらこそ宜しくお願いしますm(__)m
>やはり 色んな考え方、それに医学の進歩があるんですね。
食事については考え方が変わった部分がありましたからね。食物繊維や乳製品については、記事に書きましたが、記事に書かなかったことでも、油については以前はリノール酸系の油が良いといっていた時期もあったそうです。今はリノール酸系はだめだということになっています。
えふいーさん、
コメント有難うございます。
はやく緩解を導入できると良いですね。
入院中ということもあって「お母さんときてね。」とわざわざ声をかけに病室まで来てくれたそうです。
初心者の私にはとても分かりやすく
充実した講演だったと思います。
息子も長時間でしたが薬のことなどとても勉強になったと言ってます。
先月号の栄養医療雑誌に(名前ど忘れ)講演内容に近い記事が出てました。
斉藤先生は外来で静養指導を受けましたが
気さくで何でも聞ける感じでした。
↑これです。
私の兄貴が以前テルモに勤めていて
テルミールの開発を担当していたので
クローン病については家族の誰よりも詳しかったです。
これも兄貴がわざわざ届けてくれました。
くろーん40さんの食事に対する考え方が裏付けされましたね。私も食物繊維についてはTRY&ERRORを続けていこうと思います。
さすがにCD患者を多く診られている病院の栄養士さんの講演なんだと感心して読ませていただきました。医療現場を含め、考え方が日々変化していることがよく分かりました。
ただ、講演の内容に相当することを知らない医療従事者(旧来の栄養療法を信じている)に指導を受ける患者は不幸です。
いや、不幸という言葉で片付けてしまうにはあまりに深刻な問題にも思えますね。
せめて、自宅でできる最先端の食事療法を、CD患者の誰もが等しく受けることが出来ないものかと思ってしまいます。
雑誌の目次を調べてみると
―目次―
特集 炎症性腸疾患と栄養療法
特集「炎症性腸疾患と栄養療法」によせて
和食の時代の日本にクローン病はなかった
日本人の栄養摂取量の推移とその特徴 −食生活は欧米化したか?
炎症性腸疾患の診断と治療
食事脂肪からみた炎症性腸疾患の病態と治療
炎症性腸疾患における微量栄養素を含めた栄養管理
クローン病の成分栄養療法と累積再手術率
クローン病の在宅栄養療法時の諸問題
と結構面白そうだったので早速オーダーしました。
>テルミールの開発を担当していたので
そりゃすごい援軍ですね。
>あまりに深刻な問題にも思えますね。
本当にそうですね。IBDの場合、ある程度の病院ならどこでも同じような治療が受けられるようになってきていると思いますが、栄養指導の格差は大きいですね。
>せめて、自宅でできる最先端の食事療法を、
>CD患者の誰もが等しく受けることが出来ない
>ものかと思ってしまいます。
以前から努力はされているようなのですが、なかなか実現されないですね。