特定疾患治療研究事業

2004年10月15日

何故クローン病患者の治療に対して補助があるのだろうか。

それはクローン病が特定疾患治療研究事業(特疾事業)の対象となっているからである。特疾事業は、「(1)診断基準が一応確立し、かつ(2)難治度、(3)重傷度が高く(4)患者数が比較的少ないため、(5)公費負担の方法をとらないと原因の究明、治療方法の開発等に困難をきたすおそれのある疾患」を対象としている。

この事業は厚生省が中心となっているが、実際の手続き面では保健所が窓口となっており、各都道府県が審査をして保健所を通じて通知する体勢となっている。各都道府県のHPがある。例えば、うちの場合は千葉県都道府県の財政事情により認定基準が異なるという噂もあるが、基本は厚生省が定めたもので大きくは変わらないはずである。特定疾患医療受給者票(受給者票)の有効期限は10月1日から翌年の9月30日までとなり、毎年手続きが必要。

以前は患者の負担はゼロであったが、平成15年10月から制度が改正され、患者はそれぞれの所得税額により月最高で11,550円(外来の場合)か23,100円(入院の場合)まで負担することになった。患者が生計中心者の場合は半額となる。

しかし、訪問看護、院外処方による調剤薬局での薬剤費については負担ゼロでOKであるため、薬は院外処方にしてもらうと良いかもしれない。私の場合は、治療費だけで既に限度額を越えてしまうため、院内処方にしてもらっている。

クローン病の診断基準はこちらが詳しいが一部抜粋すると次のようになる。

主要所見
@縦走潰瘍(じゅうそうかいよう。腸の長軸(縦)方向にできた縦長の潰瘍。
レントゲン写真
A敷石像(しきいしぞう。英語でコブルストーン。腸の粘膜面の隆起が、丸い石を敷き詰めたように見える。)
B非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(ひかんらくせいるいじょうひさいぼうにくがしゅ。チーズのように脆い炎症性の腫瘤(しゅりゅう))

副所見
C縦列する不整形潰瘍又はアフタ(アフタ=腸の粘膜にできる、口内炎のような浅い潰瘍(びらん))
D上部消化管と下部消化管の両方に認められる不整形潰瘍又はアフタ

確診例 1.主要所見の@又はAを満たすもの
  (@のみの場合は虚血性大腸炎や潰瘍性大腸炎を除外することが必要である。)
  (Aのみの場合は虚血性大腸炎を除外することが必要である。)
 2.主要所見のBと副所見のいずれか1項目を満たすもの
疑診例 1.副所見のいづれか1項目を満たすもの
   (Dのみで疑診とした場合は、同所見が3か月以上恒存することが必要)
    2.主要所見のBのみを満たすもの
    (腸結核などの肉芽腫等を有する炎症性疾患を除外することが必要)
  3.主要所見@或いはAを有するが、潰瘍性大腸炎、虚血性大腸炎と鑑別できないもの

このようなクローン病の確定診断を得るために、胃カメラ、大腸内視鏡小腸造影などの検査が必要になる。

また軽快者という概念が導入された。これは
「治療の結果、症状が改善し、経過観察等一定の通院管理の下で、著しい制限を受けることなく就労等を含む日常生活を営むことができると判断された人」である。軽快者に対しては受給者票に替わって「特定疾患登録者証」が交付される。これは特定疾患の患者である証明書として利用できるが、あまり意味はないように思う。

軽快者の基準は
治療の結果、次の全てを1年以上満たした者。
-疾患特異的治療がない
-臨床所見が認定基準を満たさず、著しい制限を受けることなく就労等を含む日常生活を営むことが可能である。
-治療を要する臓器合併症等がない。

クローン病と確定診断され、最初に申請する時に注意しなければならないのは、国の費用負担となる開始時期である。これはクローン病と確定診断されたときではなく、保健所で申請が受理された日である。したがって確定診断されたら早急に書類を集めて申請しないと損になる。また都道府県の審査日は毎月何日(大体1日だけのようだ)と決まっているため、タイミングが悪いと保健所に申請しても実際に受給者証を受け取るのが遅れるため、一時的にではあるが全て自己負担となる時がある。この場合は受給証を受け取った後、領収書と申込書を添えて保健所に還付の手続きをしなくてはならない。

最近潰瘍性大腸炎(UC)が特疾事業の対象から外れるかもしれないと懸念されているが、それは患者数が増えているためである。平成15年現在特疾事業の中で一番多いのがUCの77,521人、次がパーキンソン病の77,008、次が全身性エリテマトーデスの51,911人である。クローン病は6番目の22,395人である。

一方、『重症患者認定』という制度もあり、『重症患者』に認定されると所得水準にかかわらず、医療費は無料となる。

その認定の基準は

別添1「重症患者認定基準表」における対象部位別の@症状が審査時点において存在し、かつ、A長期間(概ね6ヶ月以上)継続するものと認められるか否かを基準とするものとする。審査に際しては、申請時に提出された資料を基に、協議会に意見を求め、また、必要に応じ患者面接等を行い、患者の病状を総合的に勘案のうえ判定するものとする。


となっているが、別添1の『重症患者認定基準表』にはクローン病は載っていない。ではクローン病に重症患者認定がないのかというとそうではなく、各都道府県のHPを見ると載っているものがある。全国で統一されたものかはわからないが。

ちなみに東京都では
(7) クローン病
   N表のいずれかに該当し、かつ、P表の@及びA、B又はCを含む4項目以上を満たすこと。
 
 N表(病状について)
@ 腸管の高度な狭窄  
A 瘻孔・膿瘍形成 
B 広範な小腸病変
C 著しい栄養低下 T.P.値及びAlb値を明記
D 高度の肛門部病変
 
 P表(臨床的重症度による診断基準)
@ 排便回数 6回以上/日  
A 顕血便 3+ 
B 発熱 37.5℃以上        
C 頻脈 90/分以上
D 貧血 Hb10g/dl以下
E 赤沈 30mm/時以上

となっている。

特定疾患治療研究事業について(最終一部改正平成15年6月18日健発第0618001号)
特定疾患治療研究事業の実務上の取扱いについて(最終一部改正平成15年6月18日健疾発0618001号)

特疾票の取得についてはこちらのフローチャートも分かり易い。

(平成18年8月10日 重症認定について追記)
posted by くろーん40 at 09:15 | Comment(2) | TrackBack(1) | 特定疾患医療受給者票
この記事へのコメント
こちらに書いて良いのか迷いましたが・・
私はこの事を知りませんでしたので
是非クローン40さんに取り上げて頂けたら
もっと多くのCD患者さんが認識されるのでは
ないかと思いまして。

「厚生労働省の研究班が活動している限りは難病受給者証が発行されます。しかし、研究事業が終了すれば発行されなくなるはずです。したがって、申請される患者さんは、受給者証のデータが研究事業に利用されることに同意して頂きたいと思います。ご存じない方もおありかと存じますが、「難病対策事業による受給者証は、研究班があればこそ発行されるものであり、病気の方々を救済する福祉の考え方で発行されているのではない」ということを十分ご理解下さい。」

初めて申請を行う時に、この同意書にサインするのを
躊躇してしまったのです。
同じ方がもしかしたらおられるのではないかと。
Posted by ike at 2005年07月19日 09:12
ikeさん、こちらの関連記事にコメントを移しました。

括弧の中の文章は『臨床調査個人票の研究利用についての同意書』からの抜粋なんですよね?私が提出したときはどんな文章だったか忘れてしまいました。また各都道府県によって文章は異なるようです。

ちなみにネットで見つけた長野県のものをこちらで見れます。
http://www.pref.nagano.jp/eisei/hokenyob/yousiki/toku0712.pdf

まず、記事に書いたように
特疾事業は、「(1)診断基準が一応確立し、かつ(2)難治度、(3)重傷度が高く(4)患者数が比較的少ないため、(5)公費負担の方法をとらないと原因の究明、治療方法の開発等に困難をきたすおそれのある疾患」を対象としています。

したがって、患者の金銭面での補助は2次的な目的であり、1次的目的は原因の究明、治療法の開発にあるわけです。ですから研究利用に同意されない患者に対しては、金銭面の補助がないというのは、自然であろうと思います。

例えば慢性的な症状を示し、完治不能な病気に糖尿病があります。ご存知の通り、重症の糖尿病になるとインシュリンを定期的に注射するなど、患者にはかなりの負担がかかります。しかし、金銭面の補助はないですよね。これは患者数が多いために、治療法の開発が営利目的から自然に進むと考えられるからです。

そう考えると自分たちの病気の治療法を開発してもらうための資料として、自分のデータを提供し、治療法を開発してもらい、しかも金銭的な援助もしてもらえるというのは、恵まれていると考えられるのではないでしょうか。
Posted by くろーん40 at 2005年07月21日 09:19
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いまさら臨床調査個人票を受け取りに行ってきました。
Excerpt: 今日、かかりつけの病院に臨床調査個人票を受け取りにいった。 入院前に先生に渡しておいたのだが、自分もすっかり忘れてた。。。 だいたい8月15日締め切りじゃなかったっけ・・・先生も次の外来で..
Weblog: ぶー@クローン病
Tracked: 2005-08-22 22:28
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