免疫抑制剤は使うべきか

2005年05月11日

免疫抑制剤の使用目的は、@ステロイド減量あるいは離脱が困難な場合、A緩解維持、Bレミケードの効果を持続させる、の三つがある。


免疫抑制剤には、アザチオプリン(azathioprine, イムラン)メルカプトプリン(mercaptopurine, 6-MP, ロイケリン)メルカプトプリンメトトレキセート(methotrexate)などがあり、作用機序は良く分かっていないが、免疫機能の一部を抑制、あるいは調整する作用がある。クローン病の治療薬としては、イムランとロイケリンが最も良く使われると思う。

体を守る『免疫』を抑制するとは穏やかでない名前だが、免疫異常の症状が観察されているクローン病では免疫の一部を抑制あるいは調整することで炎症などの症状がでなくなるのだ。しかし、免疫抑制剤というと癌の治療薬をイメージしたり、副作用が白血球減少とか骨髄障害などちょっとぞっとするようなものであるため、何も知識がなければすぐに『はい』とは言いづらいのではないかと思う。私も昨年3月に再燃したときに、免疫抑制剤を飲むことを薦められたが断っている。

では免疫抑制剤は使うべきでない薬なのだろうか。

免疫抑制剤はすでに1970年ごろから日本でもCD治療に使われ始めた。しかし、昨年(2003年?)にイムランがCD治療のための免疫抑制剤として初めて保険適応を受けたことでも分かるように、そのCD治療薬としての利用は日本では一般的ではなかったというより忌避されてきたようだ。

90年代の終わりには@の目的で日本においても標準治療に採用されていたにも関わらず、昨年まで(誤。実際は2006年5月25日に保険適応開始)何故かもっともメジャーな免疫抑制剤であるイムランでさえ、保険適応を受けられなかった。ある程度の背景はtictacさんがここここで書かれている。私はまだCD歴1年半たらずなのでこの辺の背景については良く分からないが、日本で免疫抑制剤を使った治験がなかったことが大きな一因であったように思える。実際、免疫抑制剤を標準治療とする、あるいは保険適用とする契機となったのは、以前から免疫抑制剤に対し、積極的であった慶応大学の日比教授によるこの研究結果であったように見える。

余談になるが、tictacさんの記事で『免疫抑制剤嫌い』と揶揄されている(?)T先生の名誉のために付け加えると2001年の同じ頃に出された2冊の本『潰瘍性大腸炎、クローン病に克つ!』『クローン病―QOLを高めるための患者・家族へのアドバイス 』で免疫抑制剤について見ると、『大規模試験は少なく、副作用なども含めて検討の余地が残されてます』『免疫抑制剤の長期投与については2000年度の時点で(略)、悪性腫瘍発生の可能性がゼロとはいえないものの、治療が極めて困難な患者さんに有効であり、主治医とよく相談して服用するとよいでしょう』と否定的かもしれないがフェアなコメントが書いてある。

欧米では以前から@の目的だけでなく、Aの緩解維持の目的でも免疫抑制剤の服用が標準的な治療であり、効果をあげているらしい。

日本では何故緩解維持の目的使うことが標準治療でないのだろうか。

アメリカの標準治療をよく読むと、免疫抑制剤が緩解維持の目的で使われるのは、必ず『ステロイドを使った後』であることに気が付いた。これはアメリカではペンタサや5-ASAは、『副腎皮質ステロイドによって緩解を得た後の再燃を防ぐのに有効でない。』とされているからであると思われる。日本ではこの「ペンタサや5-ASAは、『副腎皮質ステロイドによって緩解を得た後の再燃を防ぐのに有効でない』」ということ(事実?)が認められていないようなのだ(認識が間違っていたらごめんなさい)。

もっともアメリカの標準治療のテキストの中で「ペンタサや5-ASAは、『副腎皮質ステロイドによって緩解を得た後の再燃を防ぐのに有効でない』」ことの根拠論文としてあげられているこの論文の抄訳には「ペンタサや5-ASAは、『副腎皮質ステロイドによって緩解を得た後の再燃を防ぐのに有効でない』」を示すようなことは書かれていない。ちなみに根拠として注に挙げられているのはP116とP294から300までなので、抄訳に含まれていないだけだと思われる。

話が横道に逸れたが、ではもし自分が免疫抑制剤の服用を主治医から指示されたらどうであろうか。

まず@とBの目的なら躊躇することなく、OKすると思う。理由はいづれの場合も、ステロイド減量・離脱、或いはレミケードの効果維持がそれぞれの時点で最も大切な治療目的となると思われ、他に代替となる手段がない、或いは乏しいと思われるからである。勿論白血球減少や免疫力が落ちるため感染症にかかりやすくなるかもしれないリスクは承知の上で、自分にあう(=副作用がでないで薬効が出る)かどうか試すだろう。

Aの緩解維持の目的でもステロイドで緩解を導入した場合には、免疫抑制剤を使うと思う。理由はペンタサが効かないようだからである。

ステロイドで緩解を導入した場合以外の緩解維持の場合には、免疫抑制剤使用に積極的なアメリカでも使わないのだから、当然拒否となると思う。

まあ実際にはこういうことは極めてケースバイケースだと思うので、こんな簡単には決めないと思うけど。

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posted by くろーん40 at 16:35 | Comment(11) | TrackBack(4) | クローン病について
この記事へのコメント
 ヘタな医者より勉強してますねw 凄く勉強になります!
 良く分からないのですが、イムランは免疫抑制剤の中でも軽い方なのでしょうか?
というのも、生体肝移植を受けた患者さんと話しをしていると、0.25mg単位で免疫抑制剤を調整していると言ってました。まぁ移植とIBDを一緒にしちゃいけないですけど。私はコレがきっかけで、イムラン50mg位なら副作用の事も気にならなくなりました。
 ていうか私の場合は、すでに服用してますし、効果が出ているので、あまり考えてもしょうがないかなとw 確かに長期服用で癌とかになったらかなり、ヘコムでしょうけど・・・。
 あと、体の大きい欧米人と小柄な日本人では効き目も副作用も違うらしいです。日本人でイムラン100mgを服用すると白血球が減少して、長期服用は難しいと主治医が言ってた気がします。
個人差はあるでしょうけど、色々と難しいですね。
Posted by ズルコビッチ at 2005年05月11日 20:10
ズルコビッチさん、ども^^

>ヘタな医者より勉強してますねw 凄く勉強になります!
ありがとうございます。

>イムランは免疫抑制剤の中でも軽い方なのでしょうか?
免疫抑制剤の場合、軽いとかきついとかはなく、種類によって効き目、作用機序が違うようです。それにIBDに対する免疫抑制剤の服用量は生体移植など他のケースに比べ、非常に少ないようです。

>効果が出ているので、あまり考えてもしょうがないかなとw
そうですね。自分にあった免疫抑制剤が見つかってラッキーなのではないでしょうか。

>体の大きい欧米人と小柄な日本人では効き目も副作用も違うらしいです。
確かにそうですね。

>日本人でイムラン100mgを服用すると白血球が減少して、長期服用は難しいと主治医が言ってた気がします。
そういうこともありそうですね。日本の場合
『アザチオプリン(イムラン®など)あるいは6MP1日50−100mg』(樋渡信夫.クローン病の治療指針改訂案(2002))ですが、
アメリカの場合、『アザチオプリン2.5mg/kgとメルカプトプリン1.5mg/kg』です。体重60kgならイムランで150mgですからね。かなり量が違いますね。

日本の場合50mgでも十分結果が出ている
http://webabst.niph.go.jp/shrk/shrkdad/SRsearch.disp_OneAbstract?aid=4000&rid=353279&dpos=1&dbold=1
ので、それでよいのだと思います。
Posted by くろーん40 at 2005年05月12日 10:13
はじめまして。くろーん調理師と申します。
最近ブログをつくりはじめた初心者なもので
・・この記事を自分のぶろぐで紹介しようとしたのですがうまくできません。(^_^;)うまくできるように何とか頑張ってみます。
Posted by くろーん調理師 at 2005年05月13日 10:17
なんどもすみません。なんとかできたような気がします。ご迷惑をおかけしました。
後、自分のブログのお気に入りにクローン40さんのブログを入れようと思ったのですが、これまたうまくいきません(^_^;)また頑張ってみます。
ほんとうにご迷惑をおかけしました。削除お願いします。
Posted by くろーん調理師 at 2005年05月13日 10:42
くろーん調理師さん、初めまして

こちらからもtbしておきました。
コメントやtbの削除は簡単なので気にしないで下さい。

クローン病の調理師さんというのは珍しいですよね。これからも楽しいブログを期待しています。
Posted by くろーん40 at 2005年05月13日 10:55
くろーん40さん

ようやくお気に入りに登録できました(^_^;)
初心者にRSSやらRDFは、なかなか理解できませんでした。

>クローン病の調理師さんというのは珍しいですよね。

よく言われます(笑)発病したのが26歳のときだったので、すでに調理師でした。転職もできないですし。。。発病当時は自分の職業を恨みましたよ・・・

こちらのブログはものすごく勉強になります。またちょくちょく来ますね。
Posted by クローン調理師 at 2005年05月13日 11:31
くろーん調理師さん、ども^^

>初心者にRSSやらRDFは、なかなか理解できませんでした。
私もその辺は全く分かりません(笑)

>こちらのブログはものすごく勉強になります。またちょくちょく来ますね。
よろしくお願いしますm(__)m
Posted by くろーん40 at 2005年05月13日 13:34
くろーん40さん、TB&コメントありがとうございました。
しかし本当によく勉強されてますね。へたなドクターよりははるかに詳しいですよね。
同じ病気の患者として恥ずかしい限りです(笑)。
それから僕のブログに寄せてもらったコメント、ステロイドを使用した後ペンタサは効かないというご指摘ですけど厳密に言うと(まあ厳密に言わなくてもいいと思うんですが(笑))ステロイドとペンタサを併用していて症状が改善してきたのでステロイドの使用をやめペンタサのみになったという事です。
一応ペンタサも1日4錠(2×2錠)まで減らしてたんですがここのところまた少し状態が悪いので9錠(3×3錠)にしてもらったところです。
まあくろーん40さんのご指摘どおりあまり効果がないのかもしれませんが個人的には状態が良くなってきているのでとりあえず効いてると思ってるのですが(笑)。
まあ他の方と比べて症状が軽いのもあるのかもしれませんし単に鈍感で効いてると錯覚してるだけかもしれません(笑)。
今度外来で診察を受けるときに主治医にくろーん40さんの話聞いてみます。
長々とコメントしてすいませんm(__)m。
Posted by shin at 2005年08月23日 18:16
shinさん、ども^^。

>しかし本当によく勉強されてますね。
有難うございます。

ステロイドとペンタサを併用したり、ペンタサを減量したり、独特の治療ですね。

>個人的には状態が良くなってきているのでとりあえず効いてると思ってるのですが(笑)。
それなら効いているのだと思います。薬が効く効かないは個人差がすごく大きいですから。調子が悪いというようなことを書かれていた気がしたので、気になって書き込みました。余計なことを書いたようでこちらこそ、ごめんなさいm(__)m 
Posted by くろーん40 at 2005年08月23日 23:02
くろーん40さんお久しぶりです。
以前いただいたコメントに最近調子が良いと返事をしたと思うのですが、イレウス(ileus) で入院してしまいました。
自分でも正直ショックだったんですが自分の病気を過信してたのかもしれません。
幸い内科的な治療だけで、また短期間で退院することができたのでまだ救われましたけど。
で今回は治療として免疫抑制剤のアザニンを使用する事を主治医と相談して決めました。
ブレドニンを離脱したあと緩解維持のために使用するのですが正直副作用とか心配なこともあるんですけどステロイドを長く使用するよりもずっとリスクが少ないとの事なんで。
まあ短期間でやめることができるかもしれませんけど。
またアザニンを使用されている方の話とかご存知なら教えてください。
僕も時々自分のブログで薬の効果などを書きたいと思いますので。
Posted by shin at 2005年09月04日 15:44
shinさん、こんにちは

>イレウス(ileus) で入院してしまいました。
それは大変でしたね。調子が良いと感じていても急に悪くなったりするとショックですよね。

>幸い内科的な治療だけで、また短期間で退院することができたので
良かったですね。ちなみにどんな治療をされたのですか?

>免疫抑制剤のアザニンを使用する事を主治医と相談して決めました
うえの記事に書きましたが、ステロイドで緩解を得た後はやはり免疫抑制剤が良いみたいですよね。副作用が出ないと良いですね。

>アザニンを使用されている方の話とかご存知なら教えてください。
私のリンク先では
『逸楽の日々』のよねさん
『雨の森』のうりゅうさん
『胡麻本舗vol2』の胡麻さん
などが経験者です。皆さん、副作用が出てしまったようですね。くろーん調理師さんも服用を検討されてます。

それからHPの方でリンクしているこちらの話も参考になると思います。
http://park7.wakwak.com/~yukosan/yuumeinabyouinn.htm
この記事は2001年に書かれたもので、当時は免疫抑制剤は日陰の存在だったようです。現在は使っている方はずっと増えていると思われます。また某超有名医も確かに当時は使ってなかったようですが、その後使うようになったようです。そういう背景を考慮して読まれると良いと思います。

これらを読んでも結局は結論がでないかもしれません。それは薬というものが、全ての人に同じ結果をもたらすものではないからです。効くといわれているレミケでも効果があるのは6割です。免疫抑制剤も効く人もあれば、効かない人もいるし、副作用がある人もいれば、いない人もいると思います。やはり『試してみる』しかないのかも知れません。
Posted by くろーん40 at 2005年09月05日 16:52
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免疫抑制剤・・・なんじゃそら??
Excerpt: 入院中に主治医から「免疫抑制剤を導入したほうがよいのでは?」と言われた。 「免疫抑制?」早速ネットで調べたがいまいちピンとこない。免疫抑制剤についてはクローン40さんのブログhttp://crohn....
Weblog: くろーん調理師?
Tracked: 2005-05-13 10:34

日本における免疫抑制剤の使い方
Excerpt: 『炎症性腸疾患における免疫抑制薬の使い方』(治療学 Vol.38 2004)に慶応病院における免疫抑制剤の使用法が書かれている。
Weblog: 40歳からのクローン病
Tracked: 2005-05-14 17:30

やっぱり・・・
Excerpt: 昨日 退院後はじめての診察に行った。採血の結果CRPは0.8だった・・・やはり少し高い・・・主治医は「将来的に狭窄が起こり手術になる可能性がある」「やはり薬物療法を強化した方がよいのでは?」と。。。具...
Weblog: くろーん調理師?
Tracked: 2005-06-09 09:51

10月15日 IBD医療講演会メモ
Excerpt: 社保中で行なわれた医療講演のメモをしておきます<現在のCD治療>大腸ファイバーでは他の臓器との関係を見ることは難しいので、大腸ファイバーを行なったとしても、大腸の異変、病変しかわからない病院によっては...
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Tracked: 2005-10-21 13:29