IL-23受容体遺伝子:炎症疾患に関与する遺伝子

2006年10月27日

クローン病を含む免疫性の炎症性疾患にインターロイキン23の受容体のある遺伝子が関連することが分ったそうです。カビバラさんに教えていただきました。


IL-23というのはインターロイキン23というサイトカインの一つで、似た構造のIL-6、IL-12とともにIL-12ファミリーと呼ばれているものである。

以前からクローン病患者にIL-6やIL-12の異常が見られることは知られており、それらをターゲットにした薬が開発されている。

IBDを含む炎症性疾患の発病がこのIL-23の受容体のある遺伝子と関わっているそうだ。

クローン病と遺伝子の関係ではNOD2が知られているが、NOD2の異常は日本人のクローン病患者には見られないことや、NOD2の異常がクローン病の悪化と関連している患者が少なかったことから、治療薬の開発の手がかりとはならなかった。

しかし、今回、IL-23の受容体のある遺伝子の異常が、IBDのリスクを増加させることもIBDが発病することを防ぐこともあることが分ったため、この遺伝子を追及していけば、IBD患者に対するより良い治療薬が開発される可能性があるそうだ。

有力誌であるサイエンス誌で発表されたサマリーの一部を要約(あまり要約になってないかもしれませんがwww)すると、

IBDに関連する遺伝的要因を特定するために、我々はゲノム全体の研究を行った。その結果、クローン病とIL-23受容体遺伝子の染色体1p31の間に非常に有意義な関連性を見出した。1p31はサイトカインIL-23の受容体のサブユニットをコード化している。 稀な異常である(rs11209026, c.1142G>A, p.Arg381Gln)はクローン病を防ぐ働きがあり、コード化されていないIL23の受容体異常はまた独立して関連している. 追加試験においても、クローン病あるいは潰瘍性大腸炎の患者の別の集団でも同様にIL-23受容体との関連が確認された。IL-23の炎症を誘発する役割についてのこれらの結果と以前からの研究はIBDの治療ターゲットとしてこのI-23を研究することを優先すべきことを示している。


CCFAでも速報でウェブサイトに掲載されており、期待が大きいようだ。

実際にこの遺伝的異常が解明され、治療薬が開発されるのはまだまだ先のことであるので、我々患者としては、遠い先のかすかな光にしか見えないが、それが早く大きな光となってくれることを期待するのみである。

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posted by くろーん40 at 16:46 | Comment(18) | TrackBack(0) | クローン病の原因と新しい治療法
この記事へのコメント
レミが使えない私としては、以前からこのIL−○○がらみの薬が研究中という事でかなり興味があったのですが、研究はどのくらい進んでるんでしょうか?後10年位でできればいいですが…。
そして、これはクローンのどの様な病状に作用する物なんでしょうか?
まだまだ研究段階なんでしょうが、1日も早い新薬を期待するばかりです…。
Posted by たらこ at 2006年10月27日 18:13
>IBDのリスクを増加させることもIBDが発病する
>ことを防ぐこともあることが分った
病気になるってことが、やっぱり、バランスを崩してるってことなんでしょうか?

期待をしてます!(人´∀`).☆.。.:*・°
Posted by oyukkie at 2006年10月27日 20:36
こんばんは〜☆
え!マジですか!?
その遺伝子が関連している事が発見されただけでも、大進歩ですよね!
この調子で、順調に研究を続けて、早く「特効薬」を開発してくれる事を切に願っています♪
素晴らしい情報を提供して下さり、どうもありがとうございます!
Posted by 駿河 流 at 2006年10月27日 23:39
たらこさん、

>研究はどのくらい進んでるんでしょうか?
IL-6やIL-12がらみの薬は第二相まで行っているものもあります。IL-23はCCFAの記事の中にIL-23をターゲットにした治療も研究されているとありますが、どの程度進んでいるかは書いてません。ということはまだ始まったばかりと考えたほうが良いと思います。

レミケが使えないなら今日本でも治験中のシムジア
http://crohn.seesaa.net/article/25318290.html
が後1、2年ぐらいで出てくると思います。

oyukkieさん、

>病気になるってことが、やっぱり、バランスを崩してるってことなんでしょうか?

そうなんでしょうね、たぶん。
人間の体って不思議ですね。
Posted by くろーん40 at 2006年10月27日 23:45
ヒトゲノムの膨大な地図の中からこうやって様々
な因子が発見されるのは、難病の人によって嬉し
い情報ですね。

でも、たまに思うことがあります。人はいったい
どこに向かっているのかって。

哲学的になるかもしれませんが、人という種族に
対して鳴らされる警報や警告を無視して、警報を
止めることに一生懸命になっているのかもしれな
い。そんな気がするんですよね。

それはともかく、遺伝子レベルでの研究は根治に
関わることですので、時間はかかるにせよ嬉しい
知らせですね。
Posted by クローンライダー at 2006年10月28日 10:28
> インターロイキン23というサイトカインの一つで、似た構造のIL-6、IL-12とともにIL-12ファミリーと呼ばれているものである。

これは間違いだと思います。IL-6 は1個のタンパク質なのに対し、IL-12 は2個のタンパク質が組み合わさったもので、構造的にも全く違います。IL-12 ファミリーと言えば、通常は同じような構造を持つ IL-23 や IL-27 を指します。

>IL-6やIL-12がらみの薬は第二相まで行っているものもあります。IL-23はCCFAの記事の中にIL-23をターゲットにした治療も研究されているとありますが、どの程度進んでいるかは書いてません。ということはまだ始まったばかりと考えたほうが良いと思います。

上にも書いたように、IL-12 と IL-23 は構造的に非常に似ている(2個のうち1個のタンパク質は共通)なので、IL-12 に効く薬物の多くは IL-23 にも効きます。現在 Phase II の段階にある抗 IL-12 抗体や経口 IL-12 阻害剤はいずれも IL-23 にも効きます。これらは既に論文発表されたものもあり、それなりに研究は進んできています。

http://www.abbott.com/global/url/pressRelease/en_US/60.5:5/Press_Release_0191.htm
http://www.syntapharma.com/PrdOralIL12Inhibitor.aspx
http://www.syntapharma.com/documents/news122305.htm

IL-23 は IL-12 と似ていますが、作用は全く同じというわけではありません。
http://www.baybio.co.jp/japanese/product/etc/il-23.html
今回の結果から、IL-23 特有の作用の方がより重要という可能性も考えられますので、IL-23 にだけ選択的に効く薬というものも開発が行われるかもしれません。
Posted by カピバラ at 2006年10月28日 12:55
> これは間違いだと思います。IL-6 は1個のタンパク質なのに対し、IL-12 は2個のタンパク質が組み合わさったもので、構造的にも全く違います。

というのはちょっと言い過ぎだったかも。IL-6 は IL-12 の「親戚」くらいの関係です。
Phylogenetic homology and shared subunits define the IL-12 family. Those shared properties also make IL-12 family members 'relatives' of the inflammatory cytokine IL-6. IL-12 consists of two subunits, p35 and p40, which interact with the IL-12 receptor 1 and 2 chains, respectively. For many years, IL-12 was the only known heterodimeric cytokine, a distinction that was lost after the discovery of IL-23, which is also a heterodimer consisting of IL-12p40 and the IL-23-specific subunit p19, which was identified by a computational screen for IL-6 paralogs. As with IL-12, the p40 subunit of IL-23 binds to the IL-12 receptor 1 chain, whereas p19 associates with a protein known as the IL-23 receptor. Another computational screen, this time for IL-12 p35 subunit and IL-6 family paralogs, identified the IL-27 subunit p28, subsequently shown to bind to EBI3 (an IL-12 p40 paralog) to form functional IL-27. A 'familial tie' between IL-27 and IL-6 came from the finding that the IL-6 receptor subunit gp130 and the IL-27 receptor−specific subunit WSX-1 form the IL-27 receptor (IL-27R). Thus, the IL-6 and IL-12 cytokine families probably arose from a common ancestor and remain close-knit by virtue of their respective functions in inflammatory responses and regulation of T cell differentiation.
http://www.nature.com/ni/journal/v7/n9/full/ni0906-899.html#B6 より。

しかし、上に挙げた IL-12 関係の薬品はおそらく IL-6 には効きませんし、IL-6 抗体も IL-12/IL-23 には効かないはずです。
Posted by カピバラ at 2006年10月28日 13:11
流さん、

>その遺伝子が関連している事が発見されただけでも、大進歩ですよね!

そうですね。
でもちょっと気になるのは、日本人の場合、親子や兄弟でIBDというのは数%と少ないことです。つまり日本人の場合、遺伝子はあまり関係ないのかも、と思ったりします。

>人という種族に対して鳴らされる警報や警告を無視して、警報を止めることに一生懸命になっているのかもしれない。そんな気がするんですよね。

なるほどそうかもしれませんね。クローン病も脂質の多い食事をしすぎている現代人に対する警告のようにも思えます。

カビバラさん、

いつも有益なコメントをありがとうございます。

>> インターロイキン23というサイトカインの一つで、似た構造のIL-6、IL-12とともにIL-12ファミリーと呼ばれているものである。
>これは間違いだと思います。

この部分はあるページにそう書かれていたのを引用したもので、自分の知識ではありませんでした。訂正ありがとうございます。記事はそのまま残しておこうと思います。

>現在 Phase II の段階にある抗 IL-12 抗体や経口 IL-12 阻害剤はいずれも IL-23 にも効きます。

なるほど、です。ただこれらの薬はいずれも『阻害剤』ですよね。サイエンスの論文やCCFAの記事を読むとIL-23阻害剤を開発するのが重要なのではなく、IL-23受容体遺伝子の変異から始まっているCD発病までの機序とそれを知った上での薬の開発なのではないかと思います。
Posted by くろーん40 at 2006年10月29日 10:12
腸管のバリヤ機構が破綻する事が IBD の原因となるという有力な説がありますが、その分子機構についての論文が Nature 電子版に掲載されました。
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/abs/nature05698.html

一言で言うと、あらゆる炎症に深く関わる NFkappaB という転写因子をブロックすると、腸管の上皮が破綻して細菌等が腸の内部に侵入し、様々な免疫反応を引き起こすというものです。この免疫反応の段階で TNF や IL といったインターロイキンが放出されるわけです。レミケードその他はここをブロックするわけですが、そもそもの原因である腸管上皮の破綻を治した方がより望ましいのは言うまでもありません。

ややこしいのは、この NFkappaB が逆に活性化されると、それもまた炎症の原因になるということです。例えば、欧米人の多くでクローン病の原因遺伝子と見られている CARD15 (NOD2) という遺伝子は、変異が入ると NFkappaB を活性化することが知られており、その事がクローン病につながると考えられています。

つまり、NFkappaB は活性化されすぎても抑制されすぎても異常を引き起こすということで、微妙なバランスを保った状態ではじめて正常に機能するのかもしれません。これを対象に治療薬を開発するのはなかなか困難かもしれません。
Posted by カピバラ at 2007年03月15日 10:06
カビバラさん、ご無沙汰です。

NF-kBは感染などに対抗する免疫反応をコントロールするのに重要な役割を果たしているので、NF-kBをブロックしたらそういう反応がでるのは、予想されたことなのかもしれません。
http://en.wikipedia.org/wiki/NF-kB

NF-kBを対象にした治療薬を開発するアイデアは以前からあるようですが、
http://crohn.seesaa.net/article/3543305.html
実際に開発が進んでいると言う話が聞こえてこないことを考えると、カビバラさんがおししゃるように開発は難しいのかもしれませんね。
Posted by くろーん40 at 2007年03月15日 15:01
いや、予想されていなかった新しい経路なので、一流紙に掲載されたわけです。
今回の主眼は免疫反応に関する話ではありません。腸管上皮がスカスカになる、という話がメインで、免疫系の異常はその結果として起こるものです。

今までは「NFkappaB の活性化→炎症がひどくなる」という話が強調されてきたので、NFkappaBを対象にした薬物も「いかにして活性を抑えるか」を重点に開発が進められてきたわけです。しかし今回の結果から、NFkappaB を強力に抑える薬ができたとしても、免疫細胞の炎症反応は抑制できるかもしれないけれども、腸管の上皮がスカスカになってバクテリアが侵入するという原因についてはかえって悪化するかもしれないとも考えられます。

腸管上皮では NFkappaB を活性化し、免疫細胞では抑制するような事ができれば一番いいのかもしれませんが、非常に難しいでしょうね。
Posted by カピバラ at 2007年03月15日 15:38
なるほど、です。

また面白い記事があったらご紹介願います。
Posted by くろーん40 at 2007年03月15日 16:48
腸管のバリアが破綻して〜、という仮説はアトピーや花粉症などでもよく言われてますね。

JIMROのサイトで解説している先生はクローン病の原因としては否定的なようですが・・・。
http://www.jimro.co.jp/cybozu/db.exe?page=DBRecord&did=87&qid=all&vid=139&rid=39&Head=23&hid=223&sid=&rev=1&ssid=3-3146-4712-g88
Posted by sada at 2007年03月15日 18:09
sadaさん、ご無沙汰です。

>腸管のバリアが破綻して〜、という仮説はアトピーや花粉症などでもよく言われてますね。

同じ自己免疫疾患ですから。興味深いですね。
Posted by くろーん40 at 2007年03月16日 16:12
名実ともに世界最高峰の科学雑誌 Nature に IBD の総説が掲載されました。最近の遺伝子研究の成果がわかりやすくまとめられています。こうして見てみると数年前に比べて分子レベルでの研究が飛躍的に進んでいる様子が分かります。治療にまで結びつけるには、まだまだ時間がかかりそうですが、メカニズムに興味がある方は一読の価値はあります。
http://www.nature.com/nature/journal/v448/n7152/edsumm/e070726-01.html
Posted by カピバラ at 2007年07月26日 14:40
カビバラさん、こんにちは

何時もありがとうございます。

読んでみたいですが30ドルはちょっと。。。。
Posted by くろーん40 at 2007年07月26日 23:11
クローン病ではなくUC関連ですが、Nature, Science と並ぶ3大科学雑誌の一つ Cell に面白い論文が掲載されました。
http://www.cell.com/content/article/abstract?uid=PIIS009286740701080X

ある遺伝子を破壊したネズミでUCに似た腸の炎症が起きました。これだけなら今までにもクローン病やUCで幾つかの遺伝子が見つかっていて、それほど驚くような結果ではありません。

興味深いのは、今回引き起こされたUC様の炎症は「伝染る」事です。正常な遺伝子を持つマウス新生児を遺伝子破壊マウスの母親と一緒に飼っておくと子供の方にも腸炎を発症しますし(垂直感染)、正常大人マウスと遺伝子破壊大人マウスを一緒に飼っておくだけでも正常なはずのマウスに腸炎が発症します(水平感染)。ただ、水平感染の場合、症状の程度は垂直感染よりもかなり弱いです。

詳しいメカニズムは不明ですが、可能性としては遺伝子破壊マウスの腸内で発生した異常な細菌叢が周囲の正常なマウスにも感染し、腸炎を引き起こす事が考えられます。また、垂直感染の場合は、母乳中の様々な免疫因子も影響を与えているかもしれません。

IBD については MAP 菌との関連は昔から言われていますし、 ATM 療法が効くという結果もあるので感染しても決しておかしくはないと思いますが、実際に感染が観察されたのは多分初めてだと思います。人間のUCとの関連も不明ですが、まだまだ未知のメカニズムが眠っているのかもしれません。
Posted by カピバラ at 2007年10月09日 18:36
カビバラさん、

何時もご紹介、ありがとうございます。

>今回引き起こされたUC様の炎症は「伝染る」事です。

遺伝子の破壊が腸内細菌に異常をもたらし、異常な腸内細菌が伝染するということなのでしょうか。面白いですね。

腸内細菌の研究が進むのが楽しみです。
Posted by くろーん40 at 2007年10月13日 13:42
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