=サラゾピリンとペンタサ=
メサラミン(mesalamine)とは日本の薬価基準名ではメサラジン(5-ASA)と言い、サラゾスルファピリジン(製品名:サラゾピリン)から抗菌成分のスルファピリジンを取り除き、消炎剤として有効と思われる5-ASAを取り出したものであり、サルチル酸とも呼ばれる。
サラゾピリンの副作用の原因の多くがスルファピリジンにあることから、サラゾピリンよりもペンタサの方が副作用が少ない。
ちなみにサラゾピリンの副作用で最も多いのは、拒食症、頭痛、不眠、嘔吐、胃部不快感、男性の精子減少症であり、これらは3分の1の患者に起こる副作用である。男子の精子減少症は8割の男性に起こると言われるが、服用を止めると数ヶ月で元に戻る。その他に30人の患者のうち1人程度に発生するものとして、痒み、蕁麻疹、発疹、発熱などがある。副作用の多くは服用開始後1ヶ月以内に起こるようだ。これらの副作用を避けるために、『量は最初少なく(例,0.5g経口で1日2回),そして,数日かけて徐々に増量し,3〜6g/日を数回に分けて投与するようにしていくべきである。』
一方、ペンタサは副作用、特に重い副作用が出る人は『めったにいない』らしい。
CD患者の間でペンタサは軽中症患者の緩解維持に使われているが、特に小腸型の患者に効くと言われている。
それはサラゾピリンがコーティングにより、有効成分5-ASAの放出がほとんど大腸に限られるのに対し、ペンタサのコーティングが小腸から5-ASAを放出し始めるようになっているためである。ペンタサの場合、小腸部分だけでなく大腸部分でも5-ASAは放出されるため、小腸型のみならず、大腸に病変のある場合にも使われている。理由はサラゾピリンの副作用が比較的強いためであり、現在は大腸型であってもペンタサが使われる傾向にあるが、副作用が問題なければ上記のように、有効成分が全て大腸に放出されるサラゾピリンの方が大腸型には効く。
ちなみに日本のクローン病治療指針案では緩解維持にメサラミン製剤を使う場合、ペンタサ®1.5〜3.0g/日か『大腸型ではサラゾピリン®2〜3g/日でもよい。』と書かれている。
=アメリカと日本のペンタサの服用量の違い=
日本では主に緩解維持の薬として知られるペンタサであるが、アメリカでは緩解維持には使われず、主に緩解導入に使われている。
緩解維持のための服用量は、日本では上に書いたように、ペンタサ®は1.5〜3.0g/日としている。一方、アメリカでは1日4g(1gを1日4回)の服用が指示されている。服用量の違いは、日本では緩解維持が目的なのに対し、アメリカでは緩解導入を目的として使われるためではないだろうかと推測される。またペンタサの副作用は服用量の増加に対応して増えることがないという性格を持つため、アメリカでは大目の服用量が支持されているということもあると思う。(ちなみにこの論文の5ページにも書かれているようにペンタサの最も効果的な服用量を探るため、1日6gに増量した場合どうなるかという治験も行なわれたようだ。2002年に書かれた論文なので治験の結果も出ていると思うが、結果は不明である)。あるいはパッケージングが日本では錠剤であるのに対し、アメリカはカプセルなので、パッケージの違いが原因なのかもしれない。
=日本とアメリカにおけるペンタサの使い方の違い=
アメリカでは緩解維持には免疫抑制剤が使われ、ペンタサは薬物による緩解導入後の緩解維持には効かないとガイドラインにも明記されている。
ペンタサが薬物による緩解導入後の緩解維持に効果がないことについては、メタアナリシスによる有力な論文(Akobeng AK, Gardener E. Oral 5-aminosalicylic acid for maintenance of medically-induced remission in Crohn's Disease (Cochrane Review))があり、動かぬものという認識のようだ。
一方日本でペンタサが緩解維持に使われている背景としては、次のような理由が推測される。
(1)緩解導入方法が異なる
日本ではまず絶食と点滴orIVHで緩解導入し、最初はステロイドなどの薬を使わないのが標準治療である。そのため、緩解導入に薬物を使っていないので論文の結果は当てはまらないという考え方である。
(2)副作用が少ない
ペンタサは副作用が少ないため、悪性腫瘍の発生などの懸念がある免疫抑制剤より安心して投与が可能であるという考えである。別の観点から言えば、免疫抑制剤は日本ではずっと避けられてきたという背景がある。
素人の素朴な疑問として、アメリカでのペンタサの使われ方にも疑問がある。
アメリカでは緩解導入によく使われるのに、緩解維持効果については上記のように完全に否定している。ペンタサの作用機序は不明ではあるものの抗炎症剤であることは確かであり、緩解導入に効果があるのなら、緩解維持にも効果があるはずではないだろうか。
アメリカで緩解導入にペンタサが効くというのは、EBM的には怪しい部分があるのである。2001年に書かれた『成人クローン病患者の治療』でペンタサについては『異なる形であるメサラジンも1日3.2-4.0gの服用が軽・中症の患者の急性治療(acute treatment)に効果的である。しかし、全ての治験においてメサラジンの効果は偽薬を上回っていない。』と書かれている。
しかし、著者のHanauer博士は、2004年に書いた『Oral Pentasa in the treatment of active Crohn's disease』という3つの二重盲検をあわせて分析したメタ分析の論文において、『ペンタサは偽薬と比較して効果がある』と結論付ける一方で、『医学的に明白な結論を導けたとも言えない』とペンタサの効果について最終的な結論を留保している。
ペンタサは緩解導入においても、未だにはっきり『効く』とは証明されていない薬だと言えるだろう。
=デリバリーシステムの異なるメサラミン製剤=
日本に導入済みのメサラミン製剤はスルファサラジンとペンタサだけであるが、アメリカでは他にも幾つかの種類がある。CCFAの記事(翻訳はこちら)も参考になる。
・アサコール
アサコールについては、以前この記事でも紹介した大腸型に効果が高いものである。
有効成分はペンタサと全く同じメサラミンだが、コーティングが異なるために、有効成分が溶け出すのが遅く、ペンタサが小腸、大腸、全ての部位に有効成分が放出されるのに対し、Asacolは大腸に入ってから有効成分が放出されるため、大腸型に効くように設計されている。
日本でもゼリア新薬がUCとクローン病の両疾患についての新薬として、第三相の治験を実施中である。
・olsalazine(製品名:Dipentum)
Dipentumはカプセル状の薬で、米国には1990年にUCの治療薬として導入されたメサラミン製剤である。
カプセルには250mgのolsalazine塩化剤が含まれている。Olsalazine塩化剤 はスルファサラジンのように、メサラミンとジアゾ成分が結合したもので、腸に入ると腸内細菌によりその二つが分解され、メサラミンとして働く、というものである。
Dipentumはスルファサラジンやアザコールが効かない人向けである。
・balsalazide(製品名:Colazal)
Colazalもカプセル状の薬で、2000年に米国で導入されたメサラミン製剤である。
カプセルには750 mgのbalsalazideニナトリウムが含まれており、大腸内の細菌により分解され、メサラミンとなる。Colazalは軽中症のUC患者の緩解導入に使われることがある。
日本と米国で使われているメサラミン製剤比較表
| 成分名 | 米国 | 日本 |
| Sulfasalazine | Azulfidine | サラゾピリン |
| mesalamine | Pentasa、Asacol | ペンタサ、未導入(アサコール治験中) |
| olsalazine | Dipentum | 未導入 |
| balsalazide | Colazal | 未導入 |
| 注腸整剤 | Rowasa(メサラミン4g含有) | ペンタサ注腸(メサラミン1g含有) |
| 座薬 | Canasa(500mgと1000mgがある) | 未導入 |
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サラゾピリンの薬疹ですが経験あります。服用し始めた時に背中・腕などに出ました。かなり痒くて発疹痕がなかなか消えませんでした。
体内残存ステロイドと免疫抑制剤服用の副作用で、全身脱毛、白血球・血小板減少という酷い目にあったこともあります。
治療法に関して、日本は栄養療法(食事療法)主体ですが、米国では薬物療法とオペ治療が主体。米国で重篤な症状の患者が多いのも患者の絶対数が多いというだけではなく、食制限をするくらいならオペをするという民族思考からきているという話を聞いたことがあります。
実際、一昔前に米国でオペをした知人からエレンタールは健康食品扱いだったと聞きました。
日本生まれのED療法は辛抱強い日本人にとっては緩解期を維持する良い方法ではありますが、米国人にとっては耐えがたいことなのでしょう。
その様なことも、両国での薬物の使用方法または効果に違いが起こる要因なのかもしれませんね。
サラゾピリンの副作用もそうですが、ステロイドの全身脱毛という副作用は恐怖ですね。免疫抑制剤の白血球、血小板減少は良くある副作用ですがやはり怖いですよね。
米国と日本の治療法の違いは、民族思考の違いというロマンチックなものではなく、やはり中心になっている医師の考え方の違いや医療制度の違いが大きいと思います。
サラゾピリンはリウマチの治療でもアザルフィジンという名称で使われていますが、これはリウマチ治療の分野では免疫調整剤とされているようですね。腸から吸収されたスルファピリジンが免疫を抑える働きがあるとか・・・。個人的にはペンタサよりもサラゾの方が効き目が強いという印象はありましたが、へーなるほどと思いました。
>腸から吸収されたスルファピリジンが免疫を抑える働きがあるとか・・・。
へーなるほど、ですね。無駄と思っていたスルファピリジンに薬効があったんですね。